MRIムービーの紹介

音声研究に使われるMRIムービーとは?

ATR-BAICではMRIの動画撮像が可能です。現在,発話運動の研究に広く用いられています。


ここでは,その撮像技術について解説いたします。まず,下の動画をご覧ください。正中矢状(しじょう)断面(体を縦割りにした断面)の動画で, 「ATR BAIC(エイティーアール ベイク)」と言っています。



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※この動画は解像度を落としています。音声のでる高解像度の動画


どこが舌で,どこが唇かは,下の図で確認してください。なお,図の右上にある囲みの中は対応する音声波形を表しています。




早口言葉のMRIムービー

2007年6月30日のNHK「解体新ショー」でATR-BAICで撮像された世界初の「早口言葉」動画が放映。

下の動画は,放送で使われた「たけたけたけた」と「たけたてかけた」を,放送時とは別の被験者が発話した動画です。



(左)「たけたけたけた」              (右)「たけたてかけた」


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※この動画は解像度を落としています。音声のでる高解像度の動画(左:たけたけたけた 右:たけたて たけた)


皆さんも「たけたけたけた」と「たけたてかけた」を言い比べてみてください。かなり「たけたてかけた」の方が難しいはずです。早口言葉が難しい一つ の原因は,規則的な運動の中にほんのちょっと不規則な運動が含まれることかもしれません。「た」では舌が前に動き,「け」や「か」では 舌は後に動きます。「たけたけたけた」は舌が前後前後前後前と,規則的に前後運動を繰り返します。ところが,「たけたてかけた」では前後前前後後前と前が 2回,後が2回繰り返されます。この不規則さが早口言葉の難しさの一因であると思われます。



非早口言葉 早口言葉
発音 た・け・た・け・た・け・た た・け・た・て・か・け・た
舌の動き 前・後・前・後・前・後・前 前・後・前・前・後・後・前


MRIムービーの撮像方法

MRIムービーはどのようにして撮像されるのでしょう?この説明は実はかなり難しいのです。MRIはそもそも、それほど早く画像を撮像することがで きません。撮像の仕方にもよりますが、ある程度綺麗な画像を撮るためには、1断面あたり1秒くらいかかります。すると、例えば「/pataka/(パタ カ)」のような短い発話ではとてもじゃないけれど撮像が間に合いません。ではどうするのでしょうか?


実はMRIムービーはリアルタイムで撮像しているのではありません。発話を規則正しく何度も繰り返す間に、少しずつデータを収集してゆきます。つま り、MRIムービーは,


 1.発話の繰り返し

 2.発話運動の正確さ(タイミングと運動の仕方の両方)


の2つの結晶なのです。どちらも画質に大きな影響を与えます。


発話の繰り返しと画質との関係

もし、発話運動が正確なら、発話運動の繰り返し回数が多ければ多いほど、輪郭のはっきりした動画が撮れます。下の図は、/pataka/という発話 運動の繰り返し回数を変えたものです。繰り返し回数が増えるほど、細部まで綺麗に撮像されていることがわかります。



(左上)128回繰り返し×2回平均 (右上)128回繰り返し×1回平均

(左下)64繰り返し×2回平均 (右下)32回繰り返し×2回平均


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※この動画は解像度を落としています。音声のでる高解像度の動画


発話運動の正確さと画質との関係

たとえ繰り返し回数が多くとも,発話運動が不正確なら画質は不鮮明になってしまいます。下の動画は「パタカ」という発話を64回の繰り返し回数で撮 像したものです。左は発話運動をできるだけ正確に、右は発話運動のタイミングと運動の仕方の両方を意図的に不正確にしたものです。ご覧のように右の動画は 使い物になりません。



(左)正確な発話運動      (右)不正確な発話運動


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※この動画は解像度を落としています。音声のでる高解像度の動画


発話タイミングの合わせ方

では、どうやって発話を規則正しく、何度も繰り返すのでしょうか?下の図をご覧下さい。



ヘッドセットをつけてMRI装置に入った被験者にガイド音が提示されます。これにあわせて発話を繰り返します。図は「たけたてかけた」の場合です。 この場合、5拍子のリズムに合わせて発話を繰り返します。1拍目で息を吸い込み、2拍目から発話をスタートします。これを指示された回数繰り返します。大 体、128回繰り返すと5−6分になります。MRIにはいる前に、10分ほど練習すれば、たいていの人は問題なく発話運動を動画にすることができます。